猫と飼い主は“気持ち”までつながっている?最新研究で分かったオキシトシンの関係
猫と暮らしていると、
「落ち込んでいるとき、なぜかそばに来てくれる」
「猫を撫でているだけで気持ちが落ち着く」
「一緒にいると、お互い安心している気がする」
そんな経験はありませんか?
もちろん、猫が人間の気持ちをすべて理解しているとまでは言えません。
ところが2026年10月、日本の研究グループから興味深い研究結果が発表されました。
猫と飼い主のオキシトシン濃度には関連があり、猫と飼い主の心理状態や普段の距離にも関係が見られたというのです。
オキシトシンは、親子の絆や社会的な関係に関わるホルモンとして知られています。
つまり私たちが感じていた、
「猫と一緒にいるとなんとなく安心する」
という感覚には、生理学的なつながりが関係している可能性があるのです。

えっ!ぼくと飼い主さんって、気持ちまでつながってるの?

そこまで言い切るのはまだ早いんじゃ。でも、猫と人の間に“体の反応のつながり”がある可能性が見えてきたんじゃよ。
この記事では、
- 最新研究で何が分かったのか
- オキシトシンとは何なのか
- 猫と飼い主のホルモンにはどんな関係があるのか
- 撫でたり話しかけたりすることに意味はあるのか
- 猫との接し方で注意したいこと
を分かりやすく紹介します。
2026年の最新研究|猫と飼い主のオキシトシンには関連があった

2026年10月14日、京都大学や麻布大学などの研究グループによる研究が、国際学術誌「iScience」に掲載されました。
研究では、29匹の猫と19人の飼い主を対象に、約1か月間にわたって日常生活を調査。
尿を採取できた猫24匹について、猫と飼い主の
- オキシトシン
- コルチゾール
などを測定しました。
さらに飼い主の気分をアンケートで調べ、猫の首輪に取り付けたBluetooth機器を使って、普段どの程度近くで過ごしているのかも記録しました。
その結果、興味深い関連が確認されました。
飼い主のオキシトシンが高いと猫も高い傾向
研究では、
飼い主のオキシトシン濃度が高いほど、猫のオキシトシン濃度も高い
という正の関連が確認されました。
猫だけ、人だけではなく、同じ家庭で暮らす猫と飼い主の間でホルモン濃度に関連が見られたことになります。
研究グループによれば、猫と飼い主双方のオキシトシンを測定して関係を調べた研究として重要な成果です。
ただし、
「飼い主のオキシトシンが猫を上げた」
「猫のオキシトシンが飼い主を上げた」
とまでは分かっていません。
あくまで「両者に関連があった」という段階です。
猫のオキシトシンが高いほど、飼い主のネガティブな気分が低かった
さらに興味深いのが、猫のオキシトシンと飼い主の心理状態との関係です。
研究では、猫のオキシトシン濃度が高いほど、飼い主が報告した
- 怒り
- 混乱
- 不安
- 抑うつ気分
などが低い傾向が見られました。
世帯単位で解析した場合には、一部の項目に絞られましたが、猫の生理状態と飼い主の気分との間に関連が見られた点は注目されます。

じゃあ、ぼくが幸せだと飼い主さんも幸せになるの?

その可能性は気になるところじゃが、まだ原因と結果までは分からんのじゃ。飼い主さんの気分が良いから猫も落ち着いている、という逆の可能性もあるぞ。
ここはとても重要です。
今回の研究だけで、
「猫が人間のストレスを治してくれる」
とは言えません。
猫と飼い主がお互いに影響し合っている可能性が見えてきた、と考えるのが適切です。
そもそもオキシトシンとは?
オキシトシンは脳で作られるホルモンで、もともとは出産や授乳に関わる働きで知られていました。
現在ではそれだけでなく、
- 親子関係
- 社会的な交流
- 愛着
- 他者との関わり
などにも関係することが研究されています。
そのため「愛情ホルモン」「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。
ただし、この呼び方は少し単純化されています。
オキシトシンが高い=必ず幸せ
という意味ではありません。
ホルモンはさまざまな生理機能に関係しており、数値だけで猫や人の「幸せ度」を判断することはできません。
猫と近くで過ごす飼い主ほど「活気」が高かった

2026年の研究でもう一つ興味深かったのが、
猫と普段近くで過ごしている飼い主ほど、活気が高い傾向があった
ことです。
研究では猫の首輪にBluetoothビーコンを取り付け、飼い主のスマートフォンとの距離から、猫と人がどれくらい近くにいるのかを推定しました。
その結果、日常的に猫の近くで過ごす時間と飼い主の気分との間にも関連が見られました。
ただし、この機器だけでは、
「撫でていた」
「膝に乗っていた」
「隣で寝ていただけ」
といった具体的な行動までは分かりません。
それでも、
単に猫を飼っているかどうかではなく、猫とどのように暮らしているかが重要かもしれない
という点は興味深いところです。
過去の研究でも「撫でる・話しかける」とオキシトシンの関連が
今回突然、猫とオキシトシンの関係が見つかったわけではありません。
2022年には一般家庭で暮らす49匹の猫を調べた研究があります。
この研究では、
飼い主が猫を撫でたり話しかけたりする頻度が高いほど、猫の尿中オキシトシン濃度が高い
という関連が確認されました。
つまり、
「なでなで」
「名前を呼ぶ」
「やさしく話しかける」
といった普段の何気ないコミュニケーションと、猫の生理状態には何らかの関係がある可能性があります。
ただし、この研究でも因果関係は証明されていません。
もともと人との交流を好む猫だから飼い主がよく触れ、オキシトシンも高かった可能性もあります。
2025〜2026年の研究では「接し方」も重要と分かってきた
近年の研究では、単に猫に触ればよいのではなく、
猫がその交流をどう感じているのか
も重要だと考えられるようになっています。
2025年の研究では、飼い主との愛着スタイルが異なる猫について、飼い主との交流前後のオキシトシンを調べました。
そして2026年に発表された別の研究では20匹の猫を対象に、交流方法や愛着タイプによってオキシトシンやストレスに関わるコルチゾールの変化が異なることが報告されています。
特に、
猫が自分から選べるような穏やかな交流では、より好ましいホルモン変化が見られた一方、強制的な交流では逆の反応が見られる場合がありました。
つまり、
「たくさん触ればもっと仲良くなれる」
とは限らないのです。
「猫が嫌がるまで撫でる」は逆効果かも

猫をかわいがりたい気持ちは分かります。
でも猫が、
- しっぽを大きく振る
- 耳を横や後ろに向ける
- 体をこわばらせる
- 顔をそむける
- 離れようとする
- 急に噛む・猫パンチする
といった様子を見せたら、一度触るのをやめてあげましょう。
猫との良い関係で大切なのは、
人間が触りたいときに触ることではなく、猫がその交流を受け入れているかを見ること
です。

ぼくから寄っていったときに撫でてもらうのが一番いいニャ!

そうじゃな。猫が離れられる選択肢を残しておくことも、信頼関係には大切なんじゃ。
2024年には「オキシトシンで人を見る時間が増える」研究も
2024年に「Scientific Reports」に掲載された京都大学などの研究では、30匹の猫にオキシトシンまたは生理食塩水を投与し、人に対する行動の変化を調べています。
その結果、
オス猫では、オキシトシン投与後に人を見る時間が長くなりました。
一方、
- 触れる時間
- 鳴く回数
- 人の近くにいる時間
には明確な変化は確認されませんでした。
また、人を見る時間についても、飼い主だけを特別に見るようになったわけではありませんでした。
犬では「飼い主と見つめ合うこと」とオキシトシンの相互作用が知られていますが、猫では少し違う仕組みがある可能性があります。
つまり猫と人の関係は、
「犬と同じ仕組みの猫版」ではない
のかもしれません。
猫は飼い主の気持ちを本当に分かっているの?
ここまで読むと、
「じゃあ猫は私の気持ちを全部分かっているんだ!」
と思いたくなります。
しかし現在の研究から、そこまで断定することはできません。
今回分かったのは主に、
猫と飼い主の生理状態や気分、距離などに関連がある
ということです。
猫が人間の悲しみや不安を、人間と同じ意味で理解していることを証明した研究ではありません。
ただ、これまでの研究では猫が、
- 飼い主の声を聞き分ける
- 人の声や表情などの情報に反応する
- 人との間に社会的な関係を形成する
ことも分かってきています。
そこに今回、オキシトシンという生理学的な側面からも新しい手がかりが加わった、と考えるとよいでしょう。
猫との関係を深めるためにできること
最新研究を見ても、特別なことをする必要はなさそうです。
大切なのは日常の小さなコミュニケーションです。
猫から近づいてきたときに応える
スリスリしてきたり、隣に座ったりしたら、猫の様子を見ながら優しく声をかけたり撫でたりします。
優しく話しかける
猫は飼い主の声を聞き分けることができるとする研究もあります。
内容をすべて理解していなくても、穏やかな声で話しかけることは日常的なコミュニケーションになります。
嫌がったらやめる
猫が離れようとしているのに抱き続けたり、嫌がる場所を何度も触ったりする必要はありません。
「やめて」というサインを尊重することも信頼関係の一部です。
何もしない時間も一緒に過ごす
いつも遊んだり撫でたりしなくても構いません。
同じ部屋で、
飼い主はテレビを見る。
猫は横で寝る。
そんな時間も猫と人の暮らしの一部です。
よくある質問
Q. 猫を撫でればオキシトシンは必ず増えますか?
必ず増えるとは言えません。
研究では撫でたり話しかけたりする頻度とオキシトシンに関連が見られていますが、因果関係はまだ十分に証明されていません。
また猫によって触られることへの好みも違います。
Q. オキシトシンが高い猫ほど幸せですか?
オキシトシンだけで猫の幸福度を判断することはできません。
行動、健康状態、生活環境などを総合的に見る必要があります。
Q. 猫は飼い主のストレスを感じ取りますか?
今回の研究では、飼い主のコルチゾールが高いほど猫のオキシトシンが低いという関連が確認されています。
ただし「猫が飼い主のストレスを読み取っている」と断定できる結果ではありません。
Q. たくさん抱っこした方が絆は深まりますか?
猫が抱っこを好むなら良い交流になりますが、嫌がる猫に無理に行うのはおすすめできません。
近年の研究でも、猫自身が選べる交流の重要性が示されています。
まとめ|猫と飼い主には「見えないつながり」があるのかもしれない

一緒にいるだけでも、ちゃんと何かがつながってるのかもしれないんだね。

そうじゃな。ただし研究はまだ途中じゃ。猫の気持ちを決めつけるのではなく、猫自身の反応を見てあげることが一番大切じゃよ。
今回の研究で覚えておきたいのは、
- 猫と飼い主のオキシトシン濃度には正の関連が確認された
- 猫のオキシトシンと飼い主の気分にも関連が見られた
- 猫と近くで過ごす飼い主ほど活気が高い傾向があった
- 撫でる・話しかける行動と猫のオキシトシンとの関連も報告されている
- 猫への接し方や愛着タイプによって反応は異なる
- 現時点では原因と結果までは分かっていない
ということです。
猫が膝に乗ってくる。
名前を呼ぶとこちらを見る。
隣で一緒に眠る。
そんな毎日の何気ない時間には、私たちが目で見ることのできない生理的な変化も起きているのかもしれません。
「猫が全部分かってくれている」と決めつける必要はありません。
それでも、猫と人が長い時間を一緒に過ごすことで、お互いの存在が心や体に何らかの影響を与えている可能性が、少しずつ科学によって見えてきています。
